この記事では『君は永遠にそいつらより若い』の感想をご紹介します。
書店の「実写化された小説コーナー」に並んでいたので,
面白そうだなと思い文庫本(580円+税)で購入しました。
実際に読んで感じたことについて,簡単にまとめています!
「まだ読んでない」「映画は見たけど原作はまだ!」という人は,ぜひ原作小説を手に取ってみてくださいね。
本書を手に取った理由
この本を手に取った主な理由は2つ。
本書を手に取った理由
- 「周囲の人や世間を一歩引いた目線で見てしまう人」の心情を描いた小説を読みたかったから
- "芥川賞作家"と書かれた書店でのポップと"映画化"というワードに惹かれたから
「周りを一歩引いた目線で見てしまう人」の気持ちと共感したかったから
私はおそらくこの本の主人公ホリガイと同じように,
友人や恋人など,周囲の人のことを一歩引いた目で見てしまうタイプの人です。
それは決して人に対して冷たいというわけではない(と思ってる)のですが,
なんとなく心の距離のようなものを感じるし,
自分とその人の対話を客観的に見てしまう節があるんです。
そして,そんな人はきっと僕だけじゃなく沢山いるんだろうなと思います。
本当に親しい間柄でリラックしして接する相手であれば,
そんなこと考える間もなく会話に没頭しますが,
そうでない多くの場合は心の隔たりがあります。
そういうタイプの人間の感じ方を小説を通して共感したくて,
それでなんかいい本はないかな〜と書店をぶらぶらしていた時,
この帯の言葉が目に止まりました↓
私には,何かが 決定的に欠けている
拭えない欠落感や,劣等感。
それでもなお他者に優しくあろうと,
彼らは不器用につくり笑いを浮かべながら,悩み続ける。
この本では,自分と同じように悩む主人公が,
大学卒業を目前にして起こる,ドロドロとした,そしてどこか人間味も感じられるような
様々な出来事や出会いを通して”自分を見つめ直していく"場面が描かれます。
同じように他人を一歩引いて見てしまうという人,
そして主人公と近い年代の大学生には必ず読んでほしい一冊です。
"芥川賞作家"・"映画化"というワードに惹かれたから
2つ目の理由はシンプルです。
書店をぶらぶらと歩いていた時に,
「映画化された名作小説コーナー」
というのが目に入り,
それに徐に近付いていったとき,
「芥川賞作家の鮮烈なデビュー作」
というポップが添えられてあったのが,本書『君は永遠にそいつらより若い』だったというわけです。
本書の初版は2009年,
映画化されたのは2021年なので,
そこまで新しいストーリーというわけではないのですが,
それでもなぜか,主人公たち大学生の日常の描写や,
その裏に潜む「嫉妬」や「哀しみ」,「凶暴性」などが親近感を持って感じられました。
途中からフィクションであることを忘れて
全く重なることなどあり得ない主人公ホリガイと自分を重ね合わせていました。
感想
まず最初に,著者の津村記久子さんの文章は心に残る独特なものでした。
ストーリーの細かなところでユーモアを交えているにも関わらず,
相手の些細な仕草や感情の動きを,
機敏にかつ繊細な言葉で表現することで人間味やその裏の暗い部分が感じられる,
そんな不思議な感覚になったのはこの本が初めて。
小説の中には聞き慣れない言葉で心情を表現している箇所が沢山出てきて,
それが主人公ホリガイの,心を機敏に感じ取ってしまう繊細な性格とマッチしていたような。
そして物語の終盤で急に明かされる驚きの真実には
あまりにも予想外で何度も読み返してしまいました。
普段親しくしている人の,知らなかった一面や過去を急に知った時のような,
そんな不思議な感覚に落ちるエンディング。
読後感は,余韻を感じながらもモヤモヤは残らないスッキリとした印象。
フェリーの甲板で夜空を見上げる最後のシーンの,
主人公の目に映る景色とほとんど同じような読後感でした。
ただ正直1回読んだだけでは足りない気がします。
最後に明らかになるいろんな出来事や,
それに対してホリガイがどう感じたかを真に受け止めるには,
何回も読み直し,それこそホリガイの心情に対して私たちが敏感であることが必要だと思いました。
読んでいる間は共感できているようだけど,
本当にホリガイと共感できているかと聞かれたら自信を持ってそうとは言えない,,,。
気難しい「変わった」女子大生。
まとめ
この記事では『君は永遠にそいつらより若い』の感想をご紹介しました。
映画版もぜひ見てみたいと感じるとともに,
描写があまりにも機敏で複雑すぎて,心の移り変わりを感じ取るのが難しい作品で私はより一層惹かれました。
ミステリーとは違いますが,少しずつ事情が明らかになる様は
読み手をハラハラさせ,ページを捲るのが止められなくなります。
この他にも津村記久子さんの作品を読んでみたいと思いました!
当ブログではこの他にも,
たくさんのおすすめ書籍をこちらで紹介をしているのでぜひご覧ください!